大人気アニメ「Hunter x Hunter」も、
2014年9月の148話で、最終回となりました。
「『ハンター×ハンター』って、なんか聞いたことあるけど、おもしろいの?」
「子どもに見せても、だいじょうぶ?」
「日本語の勉強になる作品?」
そんな疑問をお持ちの方のために、日本語教師視点で
「ハンター×ハンター」についてわかりやすく解説します!
★★★
まずは、簡単なストーリー説明です。
題名にある「ハンター」とは、物語内の架空の職業です。
「財宝・犯罪者・遺跡・生物など、稀少な事物を追求すること」を生業とします。
主人公の少年ゴンは、叔母と祖母と一緒に、小さな島で暮らしています。
ある時、死んだと聞かされていた父親がハンターとして活躍していることを知り、
自分もハンターになるため、試験を受けることを決意します。
様々な仲間との出会いや試練を経て、成長していくゴンの物語です。
★★★
続いて、作者と物語の特徴についてです。
原作者は、冨樫義博です。
「幽遊白書」の作者、「セーラムーン」の作者と結婚した人でもあります。
この人の作品の特徴は、
(1)よく練られた設定(2)魅力的な登場人物、そして(3)理屈っぽさです。
(1)よく練られた設定
物語内の「ハンター」という職業の特殊性にしても、
その他諸々の能力、対峙する敵の設定にしても、
非常にユニークかつ、綿密に練られています。
この設定が、一度にすべて明らかになるわけではない、
というところがミソです。
登場人物たちと同じ視点で、
見る側も一緒にドキドキしながら、
考えさせられます。
「次、どうなるの?」「え、なんで!?」
と思わせる場面が続々です。
つまり、複雑な設定を理解したい!
と思わせる工夫がちりばめられているのです。
このことで、多少わからない語彙が含まれていても、
文脈でなんとか補い、
理解しようとする意識が働きます。
この理由から、語彙増強には、
うってつけの作品だと言えます。
(2)魅力的な登場人物
冨樫作品は、「ちょっと狙い過ぎじゃないの?」
と言いたくなるくらい、
魅力的なキャラクターが多いのも特徴です。
主な登場人物はもちろん、脇役にいたるまで、
個性がきらりと光ります。
高校生くらいの年代までの子どもたちにとって、
心から共感できる架空の人物との出会いは、
様々なプラスの副産物をもたらしてくれます。
大好きなキャラクターが出てくるアニメを見たい、
マンガを読みたい、他のファンとインターネットで交流したい、
などなど。
「好き」という気持ちがあれば、
現地校の宿題が多くても、
習いごとで忙しくても、
日本語に触れる機会を確保できるものです。
(3)理屈っぽさ
主人公のゴンは天真爛漫で単純明快な性格ですが、
戦いに挑む場面では、驚異的な発想力で、
様々な戦術を展開します。
物語を通して、単純な戦いだけでなく、
心理戦が多いのも特徴です。
ことば巧みに、相手を誘導したり、
敵の裏をかいたり、行動を先読みしたり•••
これにも、いつもドキドキさせられます。
また、登場人物の行動ひとつひとつに、理由があり、
敵にもそれなりの事情があることが
ストーリーの流れの中で説明されます。
さらに、心情の流れや、気持ちの変化も丁寧に描かれ、
言語化されています。
「少年マンガなんて、戦っているだけでしょ?」と
お思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、
そんなことはありません。
ここまで理屈っぽければ、見ているだけで、
嫌でも多様な日本語表現に触れることになります。
★★★
お子さんに見せる際には、注意が必要な作品です。
戦闘シーンも多く出てきますので、暴力的なアニメは
見せたくないという方には、おすすめできません。
しかし、小学校高学年以上の
日本語学習者にぜひ見てもらいたい作品です。
ファンタジー世界が舞台なので、
日常生活に必要でない語彙が
多少出てくるという点をさしひいても、
語彙•表現レベルの高さと
多様さ、論理的な展開と説明は高く評価できます。
もちろん、日本語母語話者の大人の方にも、
おすすめです。